顔のない恋

……
そういえばあの日、シャープペンの芯が無くて困っていた彼に一本あげた
そのお礼らしい…

驚いた顔を向けているであろう私に
少し垂れた大きな瞳を細めて微笑む彼

瞬間、胸が弾み
釣られてフッと笑みが漏れた

『頂きます』と、口にそっと入れたキャンディーは、トロリと甘く
ほんのり感じる酸っぱさが、何となく火照る頬を冷ましてくれているようだった。


これがきっかけで
彼、前園和樹(マエゾノカズキ)と話すようになり、同じ講義が多く、よく顔を合わせたし、人見知りしないサキちゃんもいたから
仲良くなるのにそう時間はかからなかった。