顔のない恋

「玄関に見慣れない靴あったんだけど、誰か来ているの?」

お母さんに尋ねると、お姉ちゃんが帰ってきたと答えた。


「なんで?」

私の口から不意に出た言葉はコレだった。


まあ、久しく帰ってなかったとはいえ、自分の家に帰ってきても不思議ではないけど、
お姉ちゃんは、ここ最近
全く家に帰ってきてなかったし、
何より、お母さんの口調が明らかに沈んでいたから…。


「それがね…」

お母さんは大きな溜め息をついて、右手を頬に当てながら、お姉ちゃんが帰ってきたわけを話し始めた……。