綺麗だ。
そう言って追いかけてくれる内が、文字通り花だと思う……。
命あるものいずれは老いていき、やがて枯れ果てる。
それはみんなに平等に与えられた宿命だから、仕方無い。
けど、やっぱりずっと綺麗で居たい。
出逢った時と変わらず大好きなアナタの為に、綺麗で居たいのに……。
「千里先まで届く香りは無いけど」
朝食の後片付けをしていたわたしの背中に声がかかり、
ぼんやり見つめていた庭先の沈丁花から、視線を移した。
変わらない優しい笑顔は、
「千里先に居ても、キミを想う気持ちは変わらないよ」
そっと耳元で囁き、家を後にした。
……段々大きくなっていくお腹に、ちょっとナイーブになってたのかもしれない……。
母親になったら、もう綺麗なんて言って貰えなくなる。
綺麗じゃなくなったら、愛が薄らいでしまうって……。
「……馬鹿だな」
庭に出れば、沈丁花の香りが体中に巡る。
キミにも届いてますか?
パパとママの絆の香り。
小さく笑い、わたしはお腹をそっと撫でた。