──最悪だ


いつも通りに学校に行って
いつも通りに授業を受けて
いつも通りの帰り道

ただ一つだけ違ったのは
帰り道で猫を助けた事だけ


最悪だ

寄りにもよって
そんな所を見られるなんて


息をゴクリと飲むと
額を冷や汗が流れたのが分かった

どうしようかと
普段めったに使わない頭を
フルに使っても分からない

分かるのはただ一つ


「おいガキ。顔上げて目ェ見せな」

「さっさとしねぇとキレんぞコラァ!」


俺を囲む怖いお兄さん方
背中にはコンクリの塀
腕の中で俺を威嚇する猫

絶 対 絶 命

つか、お兄さん
もうキレてますよね!?

猫!威嚇する相手が違う!!


猫が爪を立てて痛い
お兄さん達の厳つい視線が痛い

こんな事になるなら
葵の言う通り千佳ちゃんに
さっさと告白するんだった!

何やってんだよ俺!!


木から降りれなくなった猫に
そっと手を差し伸べただけなのに

俺は木なんて登れないから
ちょっと手を伸ばしただけ

ほんの5mだけ……


「兄ちゃんさ……能力者だよな?」


向けられた銀の銃に
彫られたエンブレム

反能力者の革命派のもの


もう終わりだ


猫を離すと俺は諦めて目を閉じた

大通りの喧騒が遠くに聞こえ
静かな裏道がより静かに思えた


少し遅れて、銃声が響いた


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