今まで表情を崩さなかった少年だが
ハルの言動に思わず大声で笑った

笑われたハルはというと
頬を膨らませて怒っている


「笑うとこじゃないーっ!納得するとこでしょーっ!」

「ぷはっ!春は本当に面白いね……。¨何で戻ってるの!?¨って言うと思ったのに」


少年がお腹を抱えながら言うと
ハルはポカンとして周りを見渡し
そしてハッとした


「なな何でえっ!ハル、走って森を抜けたのにっ!」

「ぶはあっ!!お……遅いよ……。あー腹痛い……ぷくく……」

「ちょっとっ!笑ってないで教えてよっ、何でっ!?」


少年に近寄ってきたハルは
もう完全に警戒を解いていて
俯いて笑う少年の瞳が
怪しく光ったのに気づかなかった


「きゃ……っ」


手を引っ張られて体制を崩したハルは
そのまま少年の腕の中に収まった


「教えてあげようか」

「……っ…!」


少年の腕の中は暖かかった

が、それはハルの望む温もり
カイトの温もりとは違っていて
ハルの脳裏に過去の記憶が甦る


……いや

ハルはもう……
もうあれは忘れたの

やめて
やめて

思い出させないで


空色の瞳から溢れた涙が頬を濡らした


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