───そこ、都内の伝統ある料亭は
名のある政治家や財界の人物が
よく利用する事で知られている

料理が美味しいのは勿論
和室に置かれた机や座椅子等
気品ある物が置かれているのに
どこか居心地のいい落ち着く空間


そして今、その料亭“自由亭”では
とある会議が行われていた


「動きましたか」

「これでSANのトップが架空だという説は消えましたが、まだ何者なのかは情報部も掴んでいないようです」

「何故?街に姿を現したのだろう?」

「あの“千里眼”でも視る事ができなかった存在。それだけでも十分な情報だよ」

 
七人の男女は料理を口に運びながら
淡々と会話を進めていく

全員が目に仮面を付けているが
声や口調から40代から50代くらいだろう


「あの娘の“千里眼”を上回る能力……こちらに戻ってきたのだな」

「既に“空”の存在は国立図書館で確認済みだ」

「しかし彼らは記憶を失っているのだろう?それではあまりにも曖昧で信用に足るとは思えぬ」

「国立図書館には既に“調査班”を送った。直にそこで何が起きたのかが分かるだろう」

「何も出なければ、確定だな」

「ああ、戻ってきたのだよ。我等の理想の礎となる為にな」

「既に”海“は我等の手の内にある今、その時は近い」


上座に座る男の口角が上がった

それを見た六人は箸を止めて
男の言葉を静かに待った


「次はあれを使いましょうか」


一気に勝負を仕掛けましょう

そう言った声はその場には
不似合いな程にとても優しく
六人は口元笑みを浮かべ静かに頷いた