空の姫と海の王子




耳を疑った

口調や声色こそいつもの葵だったが
まるで子供のように素直な感情を感じたからだ


「葵……お前どうしたの?」

「……春と一緒いる内に気付いたんだ、相手に嘘を付かないでくれって言う前に、まずは自分が嘘をつくのを止めるべきなんだって」

「嘘?」

「そう、嘘」


葵は大きく息を吸い込んだ

風に靡いた黒い髪に光が当たって
周りの木々の様に鮮やかな
深い緑色に見えたのは一瞬ではなく

息を吐いて呼吸が整った時には
葵の髪は深い緑色に変化し

蓮を真っ直ぐに見るその瞳は
見慣れていた黒ではなく


「俺はお前達に嘘をつきたくない」


磨き抜かれた宝石の様に輝く
黄金の瞳に言葉を失った蓮と奈央

葵はすぐに瞳と髪色を戻すと
黙る二人の言葉を待った


「………あー、そゆこと」


ようやく言葉を発したのは奈央


拒絶、孤独、否定


そんな単語が葵の頭を過ぎる

奈央は葵の前まで歩くと
座り込んでいる葵に向かい


「あんたの事、信じるよ。あたしも嘘はつかないから後から文句言っても知らないからね」


よろしく、と差し出された手が
とある記憶と重なった


「……よろしく」


葵は少しだけ照れ臭そうに
その手を握り返した