空の姫と海の王子



悔しそうに唇を噛んだ男は
手の中の空色のジュエルを
強く握り締めて

口元が弧を描いた


「止めろ!!」


奈央はすぐに男に向けて発砲したが
それはもうすでに遅く男の手の中で
空色のジュエルは粉々に砕け散った

奈央の弾が当たった男は
笑みを浮かべたまま結晶化した

奈央はギリッと唇を噛んで
天井に向かって何発も
威嚇するように発砲した

天井から壁へそして扉も
堅い鉱石へと変化すると
奈央は銃の形をハンドガンから
ガトリングガンに変えて
生き残っていた武装部隊に向け発砲

逃げられない恐怖からの悲鳴と
けたたましい銃声は3秒程で止んで

春はあっという間だったその光景に
まばたきすることすら忘れていた

銃をジュエルに戻した奈央の横顔が
何故かとても辛そうで


「奈央?」

「……ごめん、あたし守れなかった」

「なんで?奈央は助けてくれたでしょ?」

「違う、もう…もう、設定は解除出来ない」


あの男は設定したジュエルを砕いてしまった

あの男の”設定“は奴にしか解除出来ず
その為にはその時に設定したジュエルは
設定された者の手の中になければならない

あの男の能力の最も厄介な事が
奈央のせいで起きてしまった


「奈央、春は大丈夫だよー」

「大丈夫なんかじゃない!あんた、能力使う度に命削るんだよ!?あんな痛い思いを毎回するんだよ!?」

「うん、だから大丈夫なんだよ」


優しい笑顔を見せた春

その笑顔が奈央を安心させるものだって
分かっていても、心は落ち着いていた