空の姫と海の王子



――月も星も見えない灰色の空からは
真っ白な雪がゆっくりと落ちてくる

ワンピースから出た素肌に雪が触れる
普段なら何ともないはずの冷たい風も
肌に当たる度にピリピリと痛い


人間界に来てから2日が経った

リベルに言霊の鎖を付けられてから
まともに能力が使えなくなってしまったが
空である春には、なんとなく分かっていた


「海斗……」


多分、海斗もこの空を見上げてる

能力が使えたならすぐに会いに行けるのに
能力が使えない今の春には何も出来ない

目の前で奈央が傷ついても
能力が使えない春には
葵に助けを斯う事しか出来なかった


『空の能力を捨てない限り、春は何も救えない』


リベルの言葉が頭を過ぎる


「多分、春にしか出来ないんだよね」


葵の目的を果たすことも

この戦いを終わらせることも


「……春は空だから、みんなの希望で、世界を支える大切な役割があって、」


膝を抱いて座り込むと、そのまま膝に顔を埋めた


「世界の均衡を守る為に空としてみんなを見守って、困ってる人たちには手を差し伸べて」


冷え切った春の体に触れた雪が徐々に積っていく


「……そんなの、春ひとりじゃ無理だよ」