「──……ない?」

「そう。そんな場所はこの魔界に存在しないのだ」


他のどの場所よりも高く壮大に作られた城の玉座の前に
片膝を付いていたリールはその言葉に思わず立ち上がった

無礼を咎める様子もなく
この世界で"王"と呼ばれる少女は
玉座に優雅に腰掛けている


ない。

そんな筈はない。

何故なら、私はここで見たのだから。


魔界に堕とされた私が気がついた場所は
本当にここが魔界なのかと目を疑うような
美しい森と、湖

そして、


「ついでに言うとそんな髪の子供など、どの世界にも存在せぬ。黄金の瞳はお前達天使の瞳だろう?それは妾よりもお前達の方が詳しい」

「あの瞳は私達のものとは違います。もっと、輝かしく澄んだ金色でした」

「ならば尚更だ。妾の受け継いだ魔王の記憶の中にその様な種族は存在せぬ」


魔王が組んでいた足を組み直すと
後ろに控える三人の魔神がリールの前にでた


「お引き取り下さい」


申し訳なさそうに言ったのはカノン
リールは一瞬躊躇ったが魔王に一礼すると
背を向けて歩きだした


「気をつけろ。この世界でお前は相当憎まれているみたいだぞ」

「大丈夫です」


恨まれるのは慣れた

自分が操られている間にした事は
全ての世界で許される事ではない

操られていた。その事を信じる者も少ない


この世界に私の居場所はない。

だからこそ


「私に居場所をくれた彼女を守り抜くまで死ぬわけにはいけません」