空の姫と海の王子


『……分かってると思うが、暗号化されてるとは言えこの通信は』

「いいの。聴かせてやるんだから」


そう言うと、女性は足の向きを変えて
春の消えて行った方向に歩き出した

カツ、カツとブーツのヒールが音を鳴らすが
周りの喧騒で春には聞こえていないだろう


「あんた達が安全な所で無駄口叩いてる間に何百人が犠牲になった?幾つの町が消えた?」


口調が荒くなる

通信の向こうの男は黙ったまま

聴いているだろう”あんた達“も黙ったまま


「あんた達の命令に従っててても何も変わらないし、終わらない。……だから、あたしは抜ける。」

『っ……!』

「あたしはあたしのやり方でこの戦いを終わらせてみせる」


ピッ

通信を一方的に終わらせると
女性は空を仰いで小さく笑った

言ってしまった
あいつら、協会も黙ってないだろう

だけど後悔はしていない


「あの子、覚えてるかなあ~?あ、でもまだ内緒なんだっけ?」


そう独り言を言いながら
女性──佐藤奈央は小走りになる


「ま、いいよね」


もう迷ってる時間はないのだから