空の姫と海の王子



「………?」


交差点の信号は青

赤になる前にと小走りで歩く人々
そんな人混みの中で立ち止まる女性は
春が走っていった方向感をじっと見つめていた

グレーアッシュに染められた髪は
胸下まである強めのロングパーマ


「あの子………」


思い出すように呟いたが、思い出せないのか
しばらく考え込むようにしていたが
その思考を遮るように髪に隠された
イヤホンから淡々とした声が聞こえてきた


『状況報告。建物はほぼ全壊。現在は生存者の捜索をしているが、この状況では難しいだろう』

「そっか……ま、想定はしてたけど案外早かったじゃん」

『犠牲は大きすぎるけどな』

「どうせそれも想定内、なんでしょ」


返事はない

特殊な暗号で変換された通信の向こうにいる男は
難しい顔をして、この状況を悔いているのだろう

女性にはそれが分かっていた

この状況は防ぎようがなかったこと
この男が優しすぎること

そして


「ねえ、あいつらは何て言ってる?」


この状況は仕組まれていたことも