空の姫と海の王子



床に描かれた図形を見て息を呑んだ

見たことがある
一週間前に見たばかりだ


逃げなくちゃ


本能がそう叫んだ

ここは危険だ、この紋章がある時点で
普通じゃないことが春には分かった


扉を開いて駆け出しながら
意識を集中させて風を纏う

風と共にどこからともなく桜の花が舞うと
それは廊下を覆う程に増えていく


「《桜吹雪》」


風が一際強く吹くと春の姿は消えていた

廊下に残された桜の花を眺めながら
リベルはクスクスと楽しそうに笑った


「無駄な事を。さあ葵様、参りましょう。」

「……リベル」

「?なんでしょうか?」

「……いや、何でもないよ。春の位置は分かってるね?」

「勿論ですわ」


葵とリベルが廊下を歩く音が響く

少し曇った葵の表情は
後ろを歩くリベルには見えない


「春、逃げないで。君を独りにはしたくないんだ」


葵が小さな声で呟くと
二人はエレベーターに乗り込んだ