空の姫と海の王子



寂しそうな小さな背中

きっと彼女の空色の瞳は
出会った時と同じ様に
孤独からの不安と恐怖に
戸惑い揺れているのだろう


放ってなんか、おけなかった


「春」


ビクリと大きく震えた背中を見て
男は切なそうに辛そうに微笑んだ


「こんな所にいたら風邪引くよ?」

「………春、風邪なんて引いたことないもん」

「ああ、馬鹿は風邪引かないって言うよな」

「……春、馬鹿じゃないもん」

「いーや、春は大馬鹿だよ」

「馬鹿じゃないもんっ!天才だもんっ!」


ムキになって顔を上げた春を見て葵は笑った

その優しい笑顔の中に悲しさを見付けて
春はハッとして目を伏せた


「………ごめんね」

「たまには一人になって色々考えるのも大事だろ、謝ることなんてないよ………でもな」


葵はそっと頭を撫でて
そして悲しさを隠した笑みを浮かべた


「たまには俺を頼れ、な?」


春は驚いた様に目を見開いて
そして素直な笑顔を向けた


ありがとう

春の言葉に葵も素直に笑った


空を覆う雲の隙間から差す月の光が
ゆっくりと地上を照らしていった


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