空の姫と海の王子



──由紀はゆっくりと目を開けた

隣に座って静かに本を読んでいた優は
由紀が視終わった事に気付いて本を閉じた

優が何かを訊ねる前に
由紀はその小さな口を開いた


「玲と蘭はひかり達と無事に合流できて、今こっちに向かってる。奈々と陸も起きたよ、陸は記憶が戻ったみたい」

「そうですか………それで」


優が一番聞きたい事を
まだ由紀は言っていない

由紀は小さな溜め息をついた


「……視えなかったよ。強い能力に邪魔されたみたい」

「やはり………¨SUN¨のトップに立つ男は能力者でしたか」


反能力者派と呼ばれる¨SUN¨

ほとんどが能力を持たない一般人だが
幹部の連中の中には能力者もいる

なかなか姿を見せないトップの情報は少なく
¨EARTH¨の幹部の中でも
トップは能力者か一般人かで
意見が真っ二つに分かれていた


しかし、由紀は首を横に振った


「違うよ」


優の表情から笑みが消えた


「私を邪魔したのはあの男じゃないよ」

「じゃあ一体誰が………」

「暖かくて、優しい光。全てを包み込む様に大きくて、果てしない………空色の光」


優が息を呑むのを感じた由紀は
そっと静かに目を伏せた


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