「あいつは春を誘いだす為に私達を使ったのよ」
床で気絶する陸を放置して
奈々は考えるように呟く
「本当に春が私達を捨てたなら、助けになんか来ないはず。……でも、春は私達を守ったわ」
「でもさー……何で嘘をつく必要があったんだよ。それって俺達を頼ってないからだろ」
「……春は優しいもの」
奈々が悲しそうに目を伏せると
陸は起き上がって奈々の顔を覗き込んだ
春は優しい
それ奈々も陸も知っている
それが時に
春自身を苦しめる事でも
春は笑顔で手を差し伸べる
彼女は優しすぎた
そしてそれは知らない内に
周りの者を傷つける
奈々が唇をきゅっと結ぶ
陸は黙って奈々から視線を外した
「……俺達を巻き込まない様にしてくれてんのか、俺達には関係ないと思ってんのか、春の優しさはいまいち分かりにくいよな」
「そんなの、私達を巻き込まない為に決まってるじゃない!」
「あのなー、俺達は橋本じゃねえんだから春の心の中までは分かんねえだろ?」
「そのくらい分かるわよ!」
奈々はいつもの冷静さを忘れて声を荒げた
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