──コーヒーの香りが部屋に広がる
店の二階にある由紀の部屋で
陸と奈々はマスターの淹れてくれた
暖かいコーヒーを味わっていた
由紀と優は店の地下で調べものを
玲と蘭は仲間を迎えにいくとかで
昼頃から出掛けているらしい
時計の針は午後の5時を指していた
窓の外に広がる冬の空は暗く
広がる灰色の雲のせいで更に暗く感じる
長い沈黙の後
先に口を開いたのは奈々だった
「……それで?」
「いや、俺が見たのはそこまでだけ「そんなの分かってるわよ。本当に馬鹿陸ね」
ふう、と呆れて溜め息が出た奈々に
馬鹿にされた陸は変な懐かしさを感じた
「じゃあ、何だってんだよ」
「春をそのままあいつと二人した事、春の言葉を簡単に信じた事」
「……だってそれはさー……「お黙り」
ピシャリと言い放った奈々は
立ち上がると陸の目の前に立ち
冷たい紫の瞳で陸を見下す
「春が嘘をついてる事を知りながら、何故春を置いてきたのかしら?」
「………嘘?」
「……まさか、春の嘘を見破れなかったなんて言わないわよね?」
暫くの沈黙
「……分かんなかった☆」
ウインクしながら暴露した陸を
奈々は無言で蹴り飛ばした
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