空の姫と海の王子



「……俺の知ってる春は、何時も笑ってて元気で毎日に楽しそうに筋トレばっかしてて」

「………」

「何処でも海斗といちゃついて蓮に怒られて、たまに変な事して大臣に怒られて」


陸が突き付けた拳をゆっくりと下げた

拳に隠れて見えなかったその表情に
春は一瞬目を見開いて、すぐに目を逸らした


「春がいるだけでみんな笑っていられる、そんな春だったから、俺は今まで一緒にいたんだよ」


俺だけじゃねえよ

奈々も海斗も蓮もサラ達も


「春がいつも笑顔だったからどんな時も笑って過ごせたんだ」


悲しそうに笑った陸

そんな表情見たことが無くて
春はぎゅっと唇を噛み締めた


陸は春に背を向けて歩き出す

奈々を抱き上げると
また数歩歩いて、止まった


「今の春は俺の知ってる春じゃねえ。お前が変わるまで俺はお前を空だって認めねえから」

「そんなの、知らないよ………ばいばい、陸」


両手を前に突き出すと
ブワッと陸の回りに桜が舞う

桜の花びらが散った後
陸と奈々の姿は消えていた


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