空の姫と海の王子



「……ごめんなさい」


春の弱々しい言葉に陸はハッとした

冷静になった途端に
今の体制に恥ずかしくなって
すぐに春を離して立ち上がった


「わ、分かればいいんだよ!ほら、今の内に行くぞ!!」


まだ気を失っている葵を見て
陸は座り込む春に手を差し出した


しかし、春はその手をとらず
しっかりと首を横に振った


「……だめ、春は陸達と一緒に行けないの」

「はあ……?お前、冗談はいい加減にしろよ!!」

「冗談なんかじゃないもん……!!」


春の声は震えていた

陸を見上げる空色の瞳に光は無い


「春はもう……疲れたよ」

「春……?」

「春達が世界を救ったって、次は人間同士で争いあって、自分たちで世界を滅ぼそうとしてるんだよ」


春の言葉に陸は眉を吊り上げた

そんな陸の変化に気付く事なく
春は言葉を続ける


「そんな人間達を、なんで春が助けなきゃいけないの?春が空だから?……でも空と海の扉には空の王として認められなかったんだよ」

「……やめろ」

「人間なんか知らない!勝手に殺し合えばいい!」


ヒュッ


風を切る音と共に
春の顔の前に突き付けられた拳

冷たい、軽蔑する様な瞳を向け
陸は吐き捨てる様に呟いた


「もういい、勝手にしろ」


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