──守りたい


心からそう思えて
気が付いたら体が動いてた


「へえ、その女がそんなに大事なんだ」


陸は奈々を抱き抱えながら
楽しそうに嘲笑う葵から逃げる

路地裏を必死に走りながら
何とか人通りが多い場所を探すが
迷路の様に抜け出す事ができない


陸と葵の間にある圧倒的な力の差

これが能力者と人間の差なのかと思うと
悔しくて無意識に唇を噛み締めてしまう

葵の能力が何かは分からないが
もし、使われたら陸も奈々も
怪我ではすまないのは確かだ


だから、逃げる

いつもなら無駄だと分かってても
真っ正面から相手とやり合った

それが俺のやり方だから


だけど、今は違う

俺はここで死ぬ訳にはいかない


「……っ……!」


腕の中でピクリと震えた奈々を
ぎゅっと強く抱き締めた


「大丈夫だ、俺が絶対に守る」


こいつを死なせたくない

こいつを失いたくない


理由なんて知らねえ

そんなのは後で考えればいい


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