「──ごめんね」
「別にいいよ。記憶を失った彼に知られても計画に支障はないからね」
ぼろぼろと大粒の涙を溢す春の頭に手を乗せて
よしよし、と頭を撫でる
春の桜吹雪で移動した先には
能力者逹の戦いによって廃墟と化した街
崩れたビルの前に立つと
壊れた筈の自動ドアが開いて
二人はエレベーターに乗り込んだ
ゆっくりと降下する中で
泣き止んだ春が小さく呟いた
「何で……海斗は記憶が無くなったんだろう」
「無くなっていたのは記憶だけじゃないよ」
男の言葉に春は頷いた
海の能力と身体を無くしたのに
瞳だけは深い海色のままだった
そう、ただの人間
「やっぱり、やめる?」
俯く春に優しく問い掛ける
答えは分かってるのに
この男は敢えて聞いた
もう逃げられない事を自覚させる為に
「春はやめないし……逃げない」
春の言葉に男は口角を上げた
チンッと鳴ってドアが開くと
溢れる白い光に目を細める
白いコートを着た
何百、何千という人が
大きなホールの中に座っていた
壇上に男と春が降りると
全員が二人に注目する
「今日は、明日の午前0時に実行する作戦を伝える」
静まったホールに響いた声
春は黙って男の背中を見つめていた
_

