空の姫と海の王子



『ひかり、大丈夫?』


頭の中に響いた美しい声に
ひかりは大丈夫、と頷いた


「こんなもん持ってる人間なんて奈央以来、久し振りに見た。……でもあいつ、本当に」


ただのザコ能力者なの?

こんなのを抱えてたら
普通の人間じゃ壊れるに決まってる

能力者だって同じ
制御出来なきゃ感情に喰われて廃人


「雅はどう思う?」

『……さあ、ね』

「さあね……って何?雅に分かんない事なんてないじゃん!」


自分の心に住み着いている精霊は
何百、何千という時を生きている

分からない事なんてないのに
答えようとしないのは何故か

不満そうに口を結ぶひかりだが
精霊──雅が頑固なのはよく知っている


鍋に入ったポトフを見つめた

いつの間にか収まった怒りの代わりに
現れたのは不安な気持ち


「あいつ……大丈夫かな」

『心配なら追いかければ?』

「……はあ!?なんであたしが!そんな事しなくても勝手に戻ってくるでしょ!!」

『そう。無事に戻ってこれるといいわね』


¨無事に¨

その意味を一瞬で理解して
ひかりは急いでベランダに出た


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