「よかったね。」

幸くんが優しく微笑んだ。


「うんっ!」



そして時計の針が8時をさしたとき、幸くんが立ち上がった。


「やばっ!バイト行かないと!」


「バイトってガソリンスタンドの?」


「うん。ごめん おばちゃん!はなびちゃんのことよろしくね。」

「わかってるわよ!気をつけてね?」



今日バイトあったんだ…


どうしよう


また明日会えるかな?

「はなびちゃんじゃあね!」


「わ、わたし送る!!」


「え?でももう遅いし外真っ暗だよ?」


「すぐそこまでにするから…お願い!」


「…じゃあよろしくお願いします。」



や…やったー!!






外に出ると冷たい風が吹いた。

今日はあんなに湿ってたのに今はすがすがしい。

空にはいくつもの星が輝いていた。



「幸くん。」


「ん?」


「今日、ありがとう。」


「はは。もしかしたら迷惑かなーって思ったんだけどね。」


「ううん。すごくうれしかった!おばさんにも優しくしてもらって…。」


「だったらよかった。」



そしてしばらく沈黙が続いた。




「あっ!あのさ、僕 金魚飼ってるんだ。」

一瞬ドキっと心臓の音がした。


「え…」


「しかもはなびちゃんと同じ名前なんだよ。夏祭りのときに金魚すくいで採ったんだけどね。」


「そ、そうなんだ。魚好きなの?」


「うん。すげー好き!かわいーじゃん。」


「か、かわ…かわいい!?」


うわー!かわいいだって!


「うん。それに金魚に思い出があるんだ。」

「思い出?」



夏の霧が地面を潤す夜。


私は幸くんの過去を知ることになる。