咲眞のどこか不敵な発言に、管原はピクリと反応した。


「…どういう意味かな?咲眞クン」


「こんな思い出すだけで繊細な拜早なんかは吐いちゃう話をわざわざ蒸し返したんだ…」
「ちょ、あんまそこ触れるなよ」

「管原さんは調度研究所員なんだよねぇ」

「……」

思わず半笑いの管原。

…こいつら。

「なーに考えてんだ?」

拜早も無表情に管原を見下ろす。


「…決まってるだろ」





「「黒川どうにかして」」


事務机に乗せていた管原の肘がガクッと落ちた。



「ど、どうにかって…ははは、んな無茶な」

「そうかな?大体、スラム出身者の拜早を買った時点で研究所とスラムは繋がった。スラムの黒川に研究所が関与出来ない理由は消えたよ?」

流石、咲眞は妥当なところを的確に突いてくる。かといって管原も素直にうんと言える立場でもない。


「あのな、そうなるとおまえらを買った事は公じゃない。俺だっておまえらが研究所(こっち)に売られて来た事なんて今知ったんだからな…だから大物の黒川を研究所側がどうこうってのはまず無理だ」

そんな事を言いながら管原は目を逸らす。何か、気がつく事があるようで…頭の中では思案していた。


「じゃあ、研究所事態が目論んで被験者を買ってるわけじゃないのか?」
予想が外れたみたいに少し目を丸くする。咲眞も拜早と同じ事を思っていた。

てっきり研究所と黒川は商売として繋がっているものだと。


管原が珍しく難しい顔で口を開く。

「とにかく、あまりあれの詮索はするな。保護地区と研究所、お互い深く関与しないと言っているんだ…だからこそ外界繋がりの研究所の方が、無秩序で無結束のスラムより力が上だという事を忘れるな」


「……」

一見理不尽な様だが、それは言えてると咲眞は思った。
外界に比べれば、このスラムなど小さな砂場の様なものだろう…

水に流そうと思えば流せてしまう。