それを聞き、咲眞は気付かれない様に左肩に触れた。

あの肩の傷は順調に回復し、今は包帯も取れている。
「………」

「初め担いだ時は暗がりでよく分からなかったが…髪型も茉梨亜だしな。それでここに連れて来て顔確認したらあれっこれ咲眞じゃん、みたいな。背丈も違うし服脱がせて決定ね!もう大笑い!!」
「へぇぇ(笑)」
咲眞が温かいコーヒーを管原に渡す。(砂糖こんもり)
「で、でも気付いたのに咲眞に言わなかったのな」
「いくつかカマ掛けたけど完全に記憶飛んでたからなコイツ、あぁなったら言ったところで本人は否定するか混乱するかだけだから…って咲眞クンこれ入れ過ぎ!砂糖しかないじゃない!」
温かいコーヒーに溶けきらない砂糖が山積もりになっていた。

「拜早ぁ折角入れたコーヒーを管原さんが無下にするー」
思い切り棒読み口調な咲眞を超適当に宥める拜早を見ながら手には砂糖しか見えないマグカップを持つ管原は、コーヒーを諦めて涙ながらにもう一度椅子に座り直す。



「あー…ところで、二人とも体調は大丈夫か?」


管原の問いに二人は素直にこくりと頷いた。



「実際戻ってみると気の抜けた感じだね。茉梨亜のかっこしてたなんてちょっと信じられない」

「俺、も……はは、咲眞より俺の方が頭モヤってるかも」

「そりゃしゃーねーよ、二人共記憶無かったっつってもおまえら違うパターンだからな…」

白衣のポケットから煙草の箱を取り出した管原だったが、思い直して事務机に置く。


「……なぁ、良かったら話してくれないか?」


「何を?」

咲眞が、質問の意図が分からないかの様に笑みを含みながら返した。

管原は目を反らさなかった。

「…おまえらがそうなったわけだ」

「!……」

「………」

拜早と咲眞は思い思いの表情を現し、拜早は咲眞を見やる。


咲眞もそんな拜早を見、傍目分からないくらい小さく頷いた。


そして一人、コーヒーを入れたマグカップを手に適当なパイプ椅子に座る。



口を開いたのは立ったままの拜早。





「……俺達が城を作ったのは…知ってるよな?」