「ぅわーやっぱり拜早くんだよねぇ?!どうしたんだいその頭!」
案の定、今まで茶髪だったこの髪を咎められないとは思わなかったが、実際の事を言うわけにもいかない。
「あーっと、こ、これはっすねぇ…イ…イメチェン」
「へぇぇーなんかアグレッシブで似合うよ〜」
妙に同調されてしまって空笑いに逃げる拜早。

「それにしても久しぶりだね、今までどこ居たの?」
「あ?ぁあ、ちょーっとえーGブロック辺りに…」
基本嘘など付けない拜早はついどもってしまう。あの咲眞なら、ある事ない事スラスラと言ってのけるのだろうが。
「へー君達ほんと色々うろうろしてるね。あ、でもこの前茉梨亜ちゃんに会ったよ〜」
「へ…」
先程のシティリアートの件といい、拜早は目を瞬きさせた。

「でもなんか変な事言ってたんだよ、自分に男子の友達はいないだの、その友達はどんなやつだっただの…」
「そ…それって」

茉梨亜、か?
いや、本当の茉梨亜はまだあそこに居るはず…だとすると…

咲眞が“茉梨亜”だった時か。

(あいつ…俺の事も自分の事も忘れてやがったのか…)

拜早がどこか顔を曇らせた様な気がして、秋吉は少し眉を下げつつ首を傾けた。
「あ…おれもしかして余計な事言っちゃったかな…」
その言葉に、拜早は顔を上げてわざと明るめに取り繕って否定する。

「いえ…あの、実はまっ茉梨亜のやつ、記憶喪失で!」
「ぇぇえ!!そっそうなの?!いやどうりでなんだかおかしいなぁと…」
「そうなんっすよ転んで頭とかぶつけちゃってドジでねー!でっでも、もう大丈夫最近治りましたから!」
思いっきり取って付けた茉梨亜の容態にとても親身に心配してくれた秋吉を見て、拜早は動悸を撫で下ろした。

「そぉかー、それなら良かったけど…拜早くん、君も心なしか顔色が悪いような気が…」

「は…ははははーちょっとはしゃぎ疲れてて!じゃあ、俺これから行くとこあるんでこれで!」

まるで逃げるかの様な足取りで立ち去っていく拜早を、秋吉は二つ返事で見送る。


(あーッなんで俺がこんな慌てなきゃなんねーんだよ!咲眞のアホ!!)

心の中で問題の親友に罵倒しながらそのままの勢いで目的地まで走り切る事にした。