どこか無愛想な顔で現れた子供は、しっかりと拜早を見据える。

「き、君はあの日の…」

廃屋で出会った白髪の子供…シティリアート。


拜早はこの名前に聞き覚えがあった気がするのだが、思い出せない。

そんな何も反応出来ない拜早に対し、シティリアートは口を開いた。
「ごめんね、特に用は無いんだ…ただボクもびっくりしちゃって」

無愛想から無理矢理笑みを作った様な微妙な顔で拜早に微笑んだ。
拜早もぎこちなくも頑張って苦笑する。

「そ…そりゃ捕まったはずの白の怪物がこんなとこに居たらなぁ」

「まともになったんだね」

間髪入れずシティリアートが抑揚のない声色で言ったので、拜早は少し驚きを込めて目を大きくした。


「……君は…何を知ってる?」
訝しげに問う。

大体白髪の時点で妙な子供だ。
それに…自分の名前を。
「何で俺の名前知ってんだよ」

拜早は少しだけ威嚇を込めたが、シティリアートは逆に苦笑するだけ。

「ボクもね、聞いていただけなんだ…ナンバー443関根拜早…フェレッド」
「フェレッド?」
思わず復唱する。

そして…この子供の存在に気が付いた。

「“シティリアート”って…まさか」
「ねぇ…ボクこの間トラストブルウムを見たよ」
「!!」

拜早は一瞬固まって、焦燥染みて口を開く。

「い…いつ?」

「昨日。Aブロックで」


シティリアートは……咲眞の事も知っている。

ナンバー445、トラストブルウム…

研究所での事は拜早の記憶に殆ど無いが、咲眞と自分が妙な名前で呼ばれていたのには覚えがある。
…今微かに思い出したという方が正しいが。

誰かが、特にそう呼んでいた。ナンバーではなく、妙な名前を。

(誰だっけ…思いだせない)

拜早は小さく引っ掛かるものに舌打ちし、シティリアートから踵を返した。

「いい事聞いたよ、どうも」

とにかく研究所での事は置いといて、今は咲眞だ…

「…気をつけて」

どこか淋しそうな顔でシティリアートは拜早を見送った。


管原の言っていた精神負荷の事もある。
居場所が分かったなら早く連れ戻さなければ。

「あんな咲眞、一人に出来るかよ…っ」