「この俺様も歳かねぇ、そうだ拜早、おまえからちょちょっと話聞いたら俺が添い寝してやろうか」

「…………」

「そんな顔すんなよ」

思いきり素で嫌な顔をした拜早に、管原も嫌な顔で返した。



白い昼間。

曇り空だが、時折太陽の日差しが窓から薄く入ってくる……


「おまえ、あれから三日も寝てたんだぞ…って覚えてねーか」

「あれからって…」

「ボロ屋でおまえが倒れてるのを勅使川原と捕獲員が見つけてな……なぁ、茉梨亜がどうなったか知らねぇ?」

「茉梨亜……」

記憶を思い起こす様に拜早は天井を見、そして目を見開いた。

「茉梨亜…茉梨亜は咲眞だった……」

言って、拜早はベッドから跳び起きる。

「おっおい拜早?!」
「管原サン悪い!俺咲眞を探さないと…っ!」

焦燥して床に降り立った拜早だが、案の定くらりと頭が揺れて…

「だから無理すんなって!いくら正気に戻ったからっておまえ頭も身体もボロボロなんだぞ」
管原の腕の中に落ちる。

拜早は頭だけ上げると、壁にある簡易水道の上に掛かっていた四角い鏡が目に入った。


「………」

色素の抜けた白い髪。茶色の瞳が自分を見つめている。

「……くそ」

そう小さく吐いて、拜早は管原から離れベッドに腰を下ろした。

「咲眞…早く見つけないと」
「…なんでそう焦るんだ」
疑問符を浮かべる管原。

「あいつ…咲眞、茉梨亜のかっこしてた」

「…ああ」

「咲眞、俺が…俺が、咲眞の事言ったら叫び出して……」

痛、と拜早は感じた。記憶を辿るとまだ頭が痛む。

「おかげで俺…目が覚めたんだけど」

「…茉梨亜が咲眞だったんだ、そりゃあ驚くだろ…でも最初会った時気付かなかったのな」

「あの時は…すげー雨で顔よく見えなくて…でも髪型とか、雰囲気で“茉梨亜”だって思って」

「………」

「声も…なんか俺朦朧としてて、ちゃんと確認しなかった……」

「何で…殺そうとした?」

管原は少し屈んで拜早の顔を見たが、拜早はどこか憔悴していた。


「茉梨亜は……あんな茉梨亜は居てほしくなかったから……」