「咲眞!!」
「五月蝿い!来るなぁ!!!」

近づこうとする拜早を茉梨亜は手を払って振り切る、が、震えで身体が思うように動かない。
茉梨亜はわけも分からず叫んでいた。
理解するのが恐かった。

「いい加減にしろ!!おまえはこんな奴じゃなかっただろ?!一番冷静で頭良かったじゃねーか!!」
「黙れ!!!」
今にも噛み付きそうな相手に向かい拜早は無理矢理両肩を掴みかかる。
「おまえ一人が悲しいとか思うなよ!!!じゃなきゃ俺は何で茉梨亜を殺そうとしたんだよ!!!」
「知らない!!!!」
「解かれ!!おまえまで潰れたら茉梨亜はどうなるんだ!!!」
「ッ!!!」


茉梨亜は瞬間目を見開いた。



茉梨亜……茉梨亜は………


「茉梨、亜…」



少女は、呟いた。






大きな目から、もう一度涙が流れた。










「茉梨亜は……まだあそこ………?」


そう呟いた茉梨亜の声は、もう、少女のそれではなかった。
















ふらふらと、茉梨亜は立ち上がる。


「お、おい!」


呼び止めた拜早に対し、茉梨亜は止まってゆっくりと…振り返った。






「拜早………茉梨亜が、居ないね………」












思考が停止している。

これが無というやつか。



そんな事を思って苦笑した。





…………思い出してしまった。




何が起こり、自分達はどうなったのか。


何故自分達は…汚れた茉梨亜を消したかったのか。



「思い出した………」



パチンと、茉梨亜は黄土色の髪に隠れた止め具を外す。


するりと、それは現れた。

ツインテールの黄土色髪を外すと、黒い短髪、暗闇でも薄く光る金のメッシュ。


元々服装は前と同じカーゴパンツにTシャツだ。

髪型が変わっただけで少女は……
邦浦咲眞(くにうらさくま)へと変貌した。




茉梨亜は………記憶を無くした咲眞だった。