「あいつらの所に連れて行かれたんだよ……なぁ、そうだよ茉梨亜……覚えてないならそれでいい……」
関根拜早は一歩茉梨亜に近づく。
「連れて行かれた…?しっ知らない!あたしは知らない!」
被りを振って茉梨亜は否定するが、少年の歩みは止まらなかった。

「そこで何をされたか……茉梨亜、茉梨亜は駄目なんだよ…あいつのものなんかにされちゃ駄目だ!!」
関根拜早の瞳は懇願と狂気を帯びていた。
「や…やだ、来ないで…」
少年から逃げようとは思うものの、茉梨亜の足はどうしても動かない。
「……茉梨亜」


少年は、茉梨亜の目の前に居た。






「……?!」



身体が引き寄せられたのを頭の隅で理解する。
茉梨亜は白の怪物の腕の中に居た。



「……………?!」
茉梨亜は意味が分からず困惑の顔色をはっきりと表す。



「茉梨亜…」

白の怪物はゆっくりと茉梨亜から身を離し、どこか安堵した様な表情で茉梨亜の頬を指でなぞった。



(関根…拜早…どうしてそんな顔をするの?)




それが茉梨亜の首筋までつたった時……


「汚れた茉梨亜は…俺が消してやる」





首を、力の限り掴まれた。

「はッぅ!!」
突然の事、茉梨亜は状況の理解もままならぬまま苦しい首元から白の怪物の手を剥がそうともがく。
「ぁ…あ…」
茉梨亜に手首を必死に掴まれたまま関根拜早は狂った笑みを浮かべ、苦しさで力が入っている茉梨亜の足を確認した。
そして首を掴んだ手を下に引き茉梨亜は強制的にしゃがみ込まされる。
「ッッ!!」
そのまま茉梨亜の頭を思い切り後ろの地面へ押し付けた。
「かは…ッッ!」

茉梨亜は悲痛に顔を歪ませる。


殺されてしまう――


結局、茉梨亜は誰だったのか、自分が“茉梨亜”で、本当に友達の事を忘れてしまっているのか…

“茉梨亜”達に何があったのか…


分からないまま………