暗い廃屋の中…

当然だ、日の光もなければ電灯だってない。


ただ酷く不気味な空間が広がっていた。




茉梨亜は入口で立ち尽くす。

目だけで中を見回しても、暗くて一人の人間すら何処に居るのかも分からない。





「……」


茉梨亜が廃屋の中へ入り終わると、扉はすぅっと閉まった。

次の瞬間、

「!!!」
茉梨亜は背後から口を塞がれる。
右腕もきつく後ろに回され捻り上げられた。
「ぐぅ…ぅ」
「茉梨亜…なんで追い掛けて来た?」
関根拜早が低く問う。

暫くもがく茉梨亜を睨み続けた後、ふいにぱっと開放した。


「…なんでだ?茉梨亜」

茉梨亜は開放されたと同時に関根拜早から逃げる様に離れる。
息を無理矢理整えながら少年を見据えた。

「あ…あたしは誤解を解きに来たの!それにもう一人の茉梨亜の事が聞きたくて……」

そんな茉梨亜の言葉を少年は目付き鋭く聞きながら、今度は芯のある声を返す。

「もう一人の茉梨亜なんているわけないだろ?もしかして茉梨亜、覚えてないのか……?」

「な…何言ってるの?」


返答に茉梨亜は眉を顰めた。

「だ、だって……弾くんだって、もう一人茉梨亜はいるって」
「ッハハハハハ!!!」
突然笑い出した白の怪物に茉梨亜は驚いて更に身を引く。
「ハハハ!ハハハハハ………」

「なっなによ!何が可笑しいの?!」
「管原サンな!あの人何言ってんだ?!茉梨亜が二人…ククク、茉梨亜が二人もいてたまるかっての!アハハハハ!」
さぞ馬鹿馬鹿しいというかの様に少年の笑いは止まらない。

その白の怪物の様子に茉梨亜は自分の血の気が引くのを感じた。

「じゃっじゃあ!もう一人の茉梨亜は…」
「茉梨亜は茉梨亜だよ!俺とあいつとそれから茉梨亜……ずっと一緒だっただろ?城も造った!それから……」
ひくりと、関根拜早の笑いが止まる。
「そうだ…それから…」
笑みが、消えた。