空は更に橙へと染まる。

雲のない今日は、目を開けていられない程の強い西日。



茉梨亜はいくつもの曲がり角を曲がり、息を切らせ、ようやく……

ようやく、偶然か必然か、白の怪物関根拜早の背に追い付いた。

「はぁっ……はぁっ……」

茉梨亜は手を膝につき思わず中腰で呼吸する。
着ていたTシャツはじわりと汗ばんでいた。



少年は暗く変わる空を見据えて立っている。

まるで茉梨亜を待っていたかの様に。




「……関根……拜早」

詰まる声で茉梨亜は少年の名を呼んだ。


少年は……眩しそうに、橙を映し出した茶の瞳を細めながら茉梨亜へと振り向く……

「……茉梨亜」

今は彼の白いパーカーやその中の白髪、白いもの全てが鮮やかなオレンジに染まっていた。

調度少年から見る茉梨亜は逆光になっている為、少年は真っ直ぐには茉梨亜を見ない。

「わざわざ会いに来てくれたのか……」

口の端を上げながら、白の怪物はどこか狂気の顔色を宿す。
茉梨亜は、茉梨亜はしっかりと関根拜早を目で捕らえていたものの。

「……ぅう」

呻いた。
やっぱり面と向かって会いたくなかった。
怖い。


「茉梨亜……」
「!」
一歩、少年は茉梨亜に近づいた。


(だめ、逃げてはだめ!)

茉梨亜は今にも踵を返して駆け出したい足を我慢して我慢して、関根拜早へと顔を上げる。

「あなたに聞きたい事があるの!」

「何だ?」

白の怪物は不敵な笑みのまま。

「ま……“茉梨亜”を知ってるわね!?あたしそっくりの“茉梨亜”を!!」

「…ぁあ?」
白の怪物はあからさまに眉をしかめる。

「友達だったんでしょ!?なのに……どうして殺そうとするの!?」

自然と茉梨亜は叫んでいた。

「あのね、あたしはあなたの友達だった“茉梨亜”じゃないの!そっくりかもしれないから間違えるのは分かるけど、違うの!」
「……」
「あたしはあなたなんて知らない!!」

「君は茉梨亜だ」

そう、関根拜早が言葉した瞬間

(速……い!)
既に少年は片手にナイフを掲げ茉梨亜の懐に飛び込んでいた。