茉梨亜がきょろきょろしていると、奥のついたてから飄々とした管原が登場する。

「よう茉梨亜!俺様が恋しくなったのか?!」
「それより、その人は…?」
管原の軽口をざっくり流しながら茉梨亜が気になったのは、管原の後ろから現れた見知らぬ女性。

「患者さんには見えないけど…あっもしかして弾くんの彼女?!」
「残念大ハズレよ〜」
管原の顔を押し退けて、棗は茉梨亜の目線に合わす。

「はじめまして。私は邦浦棗(くにうらなつめ)…研究所の人間よ」
「研究所…」
笑顔の棗とは逆に、追いやられた管原はぶーたれ中。
「ま、私の仕事は事務なんだけど、最近は弾の監視役を兼用してるの。ちゃんと診療所の仕事が出来ているかとかね」
「そうなんだー」
茉梨亜は感心して棗を見つめる。

「だけど弾くんの監視役なんて大変なんじゃなーい?」
「そうっ!あいつったら変に真面目だからこっちで研究資料とかかじりついちゃったらご飯もろくに食べないの!」
「えっ!」
茉梨亜はちょっと悪戯心で訊ねたのだが、意外な言葉が返って来たので思わず管原を振り向く。
管原は事務椅子に座りつつもどこか得意げにこちらを見やっていた。

「ふふふ茉梨亜、俺様がちゃらんぽらんな毎日を過ごしているとでも思っていたんだろう、ちちち甘いな」
「…弾くんってもしかして凄かったの?」
後ろの管原は無視して茉梨亜と棗は会話を進める。
「まぁね、研究所でも幹部クラスの存在なの!あのエロヒゲが信じられないでしょう」
「うんうん!」
「ちょっと棗サンさりげにエロヒゲ言わない!」
棗の容赦ない単語に管原は手を伸ばしながら悲しげにすがった。