「その様ですね。先程の香さんという方も、発症原因は解り新薬もほぼ完成していると言いました」

「そっか……塔藤さんにお薬作る第一ラボを見せて貰ったけど、研究の人少なかったの。塔藤さんはこんなものだって言ってたけど……」

「別の研究室を見せられたのかもね。今のここの人員配分って新薬の最終チェックか、拜早が関わってる“何か”でしょ」

咲眞の言い分は外れてはなさそうだった。
新薬の研究が最終段階なら、初期段階の第一ラボに人はいらない。

それを聞き、折笠は口元に手を当て思案する。

「完全な完成の状態でないなら、公に研究状況を発表しないのはまだ解りますが……実際は星間症の分析に手間取っていると見せ掛け、違う研究に移行したと考えられますね」

「てっきりSTIと拜早を平行してると思ってたんだけど……片方が完成近いんじゃ、もう片方は進め放題だね」

「そ、それって拜早をいじりたい放題って事!?」
「その言い方はどうかと思うよ茉梨亜」
茉梨亜は大真面目に慌てた発言をしたのだが、何故か制止された。

「所長って確か、勧崎とか言う人だよね。折笠さん知ってる?」

「はあ……医学界では有名な方の様ですが、僕はちょっと専門外です」

珍しく歯切れの悪い返し。だが表情を見る限り折笠は本当に知らなさそうだ。

「へえ?AMNは凄く調べたみたいなのに?」

「行動の範囲外はあまり知識に入れないもので……というか、指示されてから調べる時間もあまり」

無かったし、と言いかけて折笠は口をつぐむ。

そんな二人のやり取りに入る事が出来ず手持ち無沙汰だった茉梨亜だが、
「あのさ、あたし気になってた事があるんだけど」
思い出した様に口を衝いた。

「何?」

「研究所と黒川って、繋がってたと思う?」


茉梨亜の口から黒川の単語が普通に出た事に咲眞は驚く。
が、冷静に続けた。

「……それって、僕らが売買された事の話?」

「もあるけど、それだけじゃない気がするの。だって黒川はもう沢山お金持ってたのに、研究所に人売ってお金儲けってのも……今更な気がして」

確かに。
他にも何か都合があったのだろうか……


「あれ?……もしかして」