そして数秒後。

「す……すご」

茉梨亜の呟きには呆気と感激が混じっていた。

折笠はまさしくあっという間に、この場の警備員五人を床へと転がし…もとい気絶させてしまった。


「…っすごいすごい!何なのあなた!」

「浮かれてる場合じゃないよ、折笠さんどういうつもり?」

流石に咲眞の語尾が強まる。
だが折笠はしれっとした態度で微笑んだ。

「貴方を見ていたら、貴方をお友達の居場所へ行かせたくなったんですよ」


「は……?」

思わず目を丸くした咲眞に構わず折笠が続ける。

「ここで捕まっては今までの経緯が勿体ないでしょう?折角居場所のヒントも貰えたのに」

「え?咲眞どういう事?」

「あぁシアが……でもちょっと待って折笠さん」

茉梨亜に事の成り行きを説明しかけ、しかし不可解な対象へと向き直った。

「僕達を助けても貴方にメリットなんてないでしょ?なのになんで……大体こんな事したら余計に」

「いえ、君達を手伝う気は全くありません。あくまでも僕の仕事と方向性が合うから……言ってしまえばついでです。それに君達は重要な参考人になるはず」

そうなんでもないという口調で、周囲に倒れている男達をそのままに折笠は歩きだす。

「そうそう、防犯カメラの事は気にしなくていいですよ。今頃僕の仲間が、警備室を抑えているでしょうから」







「ね、咲眞。結局あの人なんなの?」

シアに聞いた通り、恐らく拜早が居るであろう一階フロアへと降りていく。

先を行く折笠と多少距離を取りつつ、茉梨亜は咲眞に耳打ちした。


「さっきのあの動き、タダモノじゃないわよ。警備室の仲間ってのも気になるし……」

「僕もよく分かんない。何か調べてるのかな…って思ったけど、仮にどっかの探偵だとしてもあんまり熱心に調査してる感じもしないし」

意味が分からないと、咲眞は折笠の後ろ姿をジト目で見やる。


「あと咲眞、何で白衣着てるの?何があったか説明して!」

「……ハイハイ」

茉梨亜に容赦なく服の袖を引っ張られ、咲眞はこれまでの状況説明を始めた。