被験者の個室が並ぶフロア……


「貴女の事情も話して貰います」

折笠の言葉に、泉は眼鏡の奥で目を丸くする。


「え…急に何で…」

「ここの研究員の方とお知り合いなんでしょう?」

「!」

「今、貴女をご存じの方から貴女に対する報告を受けました。研究所内にそれを漏らされても良いというのなら、従って頂かなくても結構ですが」


……どういう事だ。
今折笠は電話で何かを知ったというのか。

一体何を、誰と話した?

「……」

泉の眉が顰まる。


「研究員が私を知ってる?でも私は……」


「貴女は茉梨亜さん、でしょ?」

「……違うわ」


「「え?」」


ハモった。
高低音が綺麗にハモった。



「……え、茉梨亜じゃないの?茉梨亜だよね?」

まじまじと顔を覗き込んできたのは傍らに居たシティリアート。

泉は流石にこめかみを押さえて唸垂れ、折笠は真面目に思案顔になる。

「……貴女が茉梨亜さんじゃない?となると……じゃあ僕はどうすればいいんだ?」

「知らないよ。まったく、ほんとアンタ何者?」

泉は折笠を一睨みし、シティリアートへとしゃがみ込む。


「ごめんシア……茉梨亜じゃないんだ。いや、前は茉梨亜として会ったんだけど……」

シティリアートはその青みがかった瞳を暫く瞬いていたが、小さく呟いた。

「その声……」


そして跳び上がる様に目を見開く。

「咲眞!?……茉梨亜は咲眞だったのっ?」

咲眞は複雑そうに頷いた。
そして……その小柄な顔を見つめ問い掛ける。

「……ねぇシア、なんで僕の事知ってたの?」

だがきょとんと首を傾げられた。


「スラムでボクを助けてくれたでしょ?拜早と一緒に」

「そうじゃなくて……その時もう、僕の顔を知ってたよね?」


その言葉に微かにシティリアートが反応する。そして気付いた様に折笠を見上げたが、折笠は関心なさそうに顔を背けた。

視線を咲眞に戻し、少し困った様に続ける。


「……咲眞の事はここ……研究所に居た時から知ってるよ。拜早もね……トラストブルウムとフェレッドでしょう?」

「!」