塔藤の発言の意図が解らない。


「あ……あはは……もしかして、星乾症の症状を手取り足取り教えて貰えるんですか?」

律子は皮肉を言いながら強がった笑みを浮かべたが……

反して塔藤はきょとんとした表情になっていた。


「手取り足取り説明するには、俺が君とセックスする羽目になるけど」

「……そうですね」



律子の真面目な顔を見て、塔藤は思わず笑った。


「俺の体じゃ無理だよ」

「……? 今運動でもするかって言ったじゃないですか。じゃああれはどういう意味ですか」


「……だって君は」

塔藤は目の前の律子の頬に手を触れる。

「!」

滑る男の指先は、律子の大きめの眼鏡に行き着いた。


「――君はこの部屋から逃げようとするだろう?」




――パンッ!



「……」


弾かれた音は塔藤の手を振り払ったものだった。


「……それを俺は止めないといけない。君は不法侵入者なんだから、捕まえておかないと」

塔藤は目を細め、律子は容赦なく相手を睨みつける。

もうこの男の前で新入社員でいる必要は無くなった。