律子の頭は一瞬その発言の理解に遅れた。

が……


「意味、解るね」



「……ッ」


律子が顔を上げた時、塔藤と目前で目が合った。


(……しまった)



静かに律子の血の気が引いていく。

「それ……」

塔藤は見定める様に自分を見ている。


「本当……ですか」

律子は苦し紛れに失笑で口を開いた。

「ああ。君も“新入社員となる”なら分かるだろう?」

目の前で塔藤から淡々と紡がれる。

「星乾症は性交によって起こる症状だ。STI……つまり性感染症なら、実際にあらゆる性行為を行って貰った方がレポートが書き易い」

その説明で律子は更に目を見開く事になる。


「は……それって……」

「それは、当たり前だがその行動中を研究員は始終監察するという事だ。例え性行為でもこれは研究だからね」


――。

思わず後ずさった律子だったが、事務机に行き場を阻まれる。

「あ、当たり前って……そ…んな研究の仕方……」

――また既視感。


今度のものは塔藤とは関係ない。


行為を見られる――見せられるなんて――

まるで

「……塔藤さん……なんでこの部屋を案内したんですか」


無意識に声が震える。


気持ち悪いフラッシュバックが走った。


「と……塔藤さん、あたし、休憩はもういいです……」

律子は吐き出しそうな胸やけを圧し止めた。


「……そう?なら運動でもするかい?」