「星乾症発症の原因は、行為そのものの仕方によって起こるだろう?」

思惑が読めない目線で見つめられ、律子は小さく身を引く。

小さな個室に今どうして二人きりで入っているのかと、律子は客観的に疑問を感じた。


が、塔藤の問いに答えないわけにもいかない。


「は、はい……そうですね」

「なら、最初は実践してみるしかなかった……という理屈も分かるね?どういう部位が、どういう体位で炎症を起こすのか」

塔藤は腕を組みながら部屋唯一の扉へ背を預ける。

そんな相手に、律子は訝しげな目を向けた。

「実践って……塔藤さん、意味がよく分からないですが……」


律子は“予習”をしてきている。

「STI」が何であるかも“分かっている”し、それ故に星乾症が何であるかも理解している。

だがまだ塔藤の言葉では事情が繋がらない。

研究所と、星乾症……黒川……実践。


「意味が分からない…?」

塔藤はひやりとした目で律子を視界に入れていた。


「君は予習をしているんだろう?」

「……予習にも、出来る出来ないの範囲がありますから」

静かに言い切った律子だったが、反して塔藤は思案顔になる。

「そうか……ん?なら、君のさっきの発言は……」


律子は努めて冷静に塔藤を見上げた。

「……私、何かおかしな事言いました?」

と、同じくしてその対象の男はくつくつと喉で笑う。

その動作はあからさまにそうしている様で、まるで“先程から律子に違和感があった”とでも言いたげな……

「な……なんで笑うんです?」

「薬品のテストはどうするのかと、君はさっき聞いたね」

突然塔藤は律子を見据え、扉に預けていた背を離しついと律子へと近付いた。

「特別に君には教えてあげようか」


小さな部屋だ、すぐに二人の距離は縮まった。

「っ?」

近付かれる事に畏怖して律子は顔を伏せながら眉間を寄せる。

……嫌な予感がした。


「テスト方法は口にするだけなら簡単だ。星乾症を持つナンバーに薬のサンプルを投与する」

「……」

「そのナンバー同士で寝て貰うんだ」