律子から見た第一印章……塔藤に案内されたこの場所は、見るからに研究室といった感じだった。
理科室を思わせる様な広い空間に、ビーカーや顕微鏡、後は名前も解らないガラス器具が並んでいる。
「ここがプロジェクトの第一ラボ……ここで薬品サンプルの元を精製してるんだよ」
穏和に塔藤が説明する横、律子はずれた眼鏡を直しながら部屋に足を踏み入れる。
(ここが研究室……)
既に作業をしていた白衣の人物達に軽く挨拶をする塔藤。それに習いながら、律子は周囲を見渡した。
……どうやらここには研究員しか居ない様だ。
「……」
「ん?どうかしたかい」
「あ、いえ」
不意に顔を覗き込まれ慌てて首を振る。
「塔藤さん、この部屋が第一ラボなら、他の部屋もあるんですよね」
「ああ。……順々に第二第三ラボに回していって、薬品として仕上がったものはテストされるんだ」
ふと律子は首を傾げながら訊ねた。
「第一という事は薬の最初の精製場所って事ですよね……その割りになんだか人が少なくないですか?」
「……そうかな」
この研究室には三人しか人がいない。
「こんなものだよ」
それでも塔藤はこれが普通だという様に言葉を返した。
……だが、律子は違和感を感じていた。
このような巨大な研究所に対し、メインの星乾症とやらの第一ラボがこの人数……
先程の間宮が所属する照合処理班の作業場の方が、見るからに研究員で埋まっていたというのに。
「もしかして間宮先生の所と比べてるのかな?」
思案している律子の図星を突かれる。
「そ……うなんです。あの部屋はあんなに人が居たのに」
「照合処理というのは内容が細かいからね。データの量も膨大だし」
塔藤は少し肩を竦めて見せた。
「俺の班は収集分析をしてるけど、この場所と同じく三人だけだよ。班にも色々あるんだ」
「そう、なんですか……」
違和感を拭えないまま、律子はもう一度部屋を見渡した。
そして、なるべく自然な態度を意識して口を開く。
「……薬品のテストは、どういう風にするんですか?」



