「あのねぇ、無理矢理行ったって門前払いに決まってるよ。かといってこの間みたいにこっそり入る事が出来る場所でもないし」

研究所にスラムの住人が正面堂々と入れて貰えるわけがない。
それにあちらの警備体制は黒川邸と違いプロなのだ。

「じゃーどーするの!咲眞、棗さんのコネとかないの?」


「コネで入れるものなのかなぁ」

「やってみる価値はあるよ!それに咲眞は外界者なんだし……見学したいんですけどー、みたいな!」

一見それもアリな手の様な気もするが……


「無理だと思うよ、見学出来る所より企業秘密の方が多いだろうしさ」

「うーん」


……でも、この方法は使えるかも知れない。


「茉梨亜、僕っていくつに見える?」

「は?いきなり何言ってるの……一応歳そーおーだと思うけど」

首を傾げながら答える。


「そっか。せめて二十歳以上じゃないとな……」

「???咲眞の顔じゃ男性ってのはまだ無理じゃない?どっちかと言えば女の人で通した方が二十歳以上……」

そこまで言って、茉梨亜はあからさまにハッとした。

「ま……まさか!!」

「僕もまさかだよ、こんな展開になるとはね」

数分前には白紙だった計画書が、不本意な条件の元咲眞の頭に出来上がる。

「けどかなり大掛かりな事になるなぁ。個人データ二つ買わなきゃ……」

「ほ、ほんとにするの咲眞!?あたしかなり楽しみなんだけど!」

「遊びに行くわけじゃないんだよ?」

「わっかってるわよー!あ」

咲眞の頭の中が直感的に分かってウキウキ仕出した茉梨亜だが、ふと止まる。