「やぁご苦労様、管原、それに勅使川原(てしがわら)も……適当に押し込んでくれ」

目的の扉を開けると、朗らかな声が部屋から聞こえてきた。

入り口付近は広くスペースが在るが、奥は本やら資料、カルテやROMディスクがひっくり返っているのが見て取れ、管原と勅使川原は揃って怪訝そうな顔をした。



二人は何かが乗ったストレッチャーベッドを強引に部屋の中へと入れる。

既に入り口はそのストレッチャーで封鎖されたも同然となった。


「ごめんねー、今人手が足りなくてさぁ誰かをそっちにやれなかったんだ」

明るい声色で部屋の奥に居た人物が言う。
机の周りで、何故かファイルをひっくり返しながら。

「どうせこの部屋で仕事をするんだ、構わない」

「しっかし塔藤(とうどう)さんよ、おまえが片付けしないのはいつもの事だが今日は一体どうした、何この酷さ」

勅使川原は淡々と自分用のパソコンデスクの前に座り、管原は服や紙で散らばり埋もれていたソファに無理矢理腰を下ろした。


四角いその部屋はパソコンがいくつか並べられ、資料棚が陣取っている。

壁際には、なかなかお高そうなソファ(管原が座っている)と背の低いガラスのダイニングテーブルの様なものがセッティングされているが、今はそれも資料やらなんやらで見え隠れ状態。


「いやぁ、ちょっと探し物をね……」

塔藤と呼ばれた男は苦笑しながら管原を見上げた。
派手な金髪を無造作にワックスか何かで動きをつけた髪型に、耳にはピアスが光っている穏やかな顔立ちだ。
そんな身なりだが着ている白衣が似合わないというわけでもない。

しかしどちらも黒髪の管原や勅使川原と並ぶと、どうしたって派手である。


「探し物?っておまえそんなにひっくり返したら見つかるもんも見つからねーだろ」
「同感」
管原の指摘に、勅使川原がパソコンを立ち上げながら無表情で頷いた。

「俺整理整頓って苦手でさぁ」
「「知ってる」」
「一体何無くしたんだよ」
あははと悪びれも無く笑う塔藤に対して二人が声を揃え、管原がソファに落ち込みながら問う。

「ほら、あのCDロムの改良版」

「何だって?」

「だからー拜早君が録ってきたデータを解析するCD-ROMの更新版だよー」