「今拜早を起こしに行こうと思ってたの。もう11時なんだから!」

おお、確かにそれは寝過ぎだと思って驚いた。

そして茉梨亜が今傍に居る事に、何の違和感を持たない自分も居た。


「……おはよう、茉梨亜」

「うんっおはよう拜早!」


快活に笑う少女は、今までずっと一緒に居た女の子だった。



「でも朝から拜早の独り言に、名前出して貰えるなんて嬉しいなーっ」

何が良かったのか、茉梨亜はご機嫌に近くの袋を漁る。
袋の中からはコンビニ的なおにぎりやパンが出てきた。

「や、茉梨亜っつったのはそういう意味じゃ……」

「え?」

茉梨亜からパンを受け取りながら拜早は少し呻く。

「じゃあどーいう意味の茉梨亜なのよ」

「あー……、おまえが戻ってきてくれて良かったな…って」

それはフツウにあたしの意味じゃないの、と茉梨亜は首を傾げたが、特に気にする事なく笑顔を向ける。

「ありがと拜早っ あたしね、戻って来たからには二人に恩返しがしたくて」

スラムの瓦礫から調達した適当な椅子に腰掛けて、茉梨亜は気合いの入った顔をした。


「恩返し……?」

「そ!あのね、あたしが二人を護るの!」


頑張るから!とでも言いたげな勢いの茉梨亜だが、拜早は食べかけのパンを零しそうになる。

「…茉梨亜が俺らを護るのか?」

「うん!」


いやいや女の子に守られる男の子達ってどうなんだろう。
別に茉梨亜が弱いと思ってるわけじゃないのだが。


「茉梨亜、そんな気合い入れなくても…」

「何言ってんのこれくらいしないと駄目なんだから!何か危険があったら迷わずあたしを盾にしてね!」

任せて!と言ってずいっと顔を寄せてくる。
なんかとんでもないおてんば発言をしているような気がしないでもない。


「茉梨亜……俺らだって茉梨亜が傷付くのは嫌だからおまえを護るぞ?」

殆ど呆れ顔で拜早は半目になったが、

「む、それじゃあ誰も盾にならないじゃない!大丈夫あたしの事は気にしないで!」

茉梨亜は笑顔でそんな事を言い切った。