スラムの中を目的無く歩きながら、茉梨亜は思案を巡らせていた。

抱いた違和感を……どうしても拭い去る事が出来ない。


(“あたし”と“友達”……その繋がりは、どこから?)


そして、何故か自分の名前を知っていた人達。


(白い怪物と、弾くん)


もしかしたら彼らも、“友達のいる茉梨亜”と会った事があるのかもしれない。

(白の怪物は“茉梨亜”を殺そうとした……二人の間に何かがあったって事だよね。白の怪物が殺人未遂者になったのも関係が……?)


自分そっくりの“茉梨亜”がきっと存在するのだろう……そしてその茉梨亜は茶髪と黒髪金メッシュの男の子の友達がいて、白の怪物には狙われ、管原とは面識がある……


(こんなとこかな。きっと弾くんも、その“茉梨亜”に弾くんって呼ばれてたのね……)

なんだか茉梨亜は、“茉梨亜”に先を越された気がして少しだけ妙な悲しさを感じた。



(と、とにかく…この茉梨亜、調べてみたいかも!)

毎日単調なスラムの生活にとって、ちょっとした出来事を掘り下げていく程楽しいものはない。

特に今、つるむ友達というものがない茉梨亜にとってこんな機会は自分の足で動かないと勿体無いと思ったのだ。


「もし“茉梨亜”と友達になれたら…不思議だろうなぁ」

茉梨亜は少しはにかみながら笑った。