スラムの昼間は結構賑やかで人通りもある。

古びた市場の様な通りを茉梨亜は歩きながら、知り合いの女性から果物を二つ手に入れた。

市場といってもスラムは基本的に物々交換が主流。
それに売り物といっても自分が使わないもの、いらないものを分け与えているといった方が合っている。
国から上手く大量の配給をさせ、配ってくれる頼もしい人もいる。

…まぁ、スラムのどこかには外界と接触し、金を物にしている人間もいるらしいが。



「うふふーラッキー!これで今日一日持ちそう!」

茉梨亜は果物を抱え、人があまり来ない脇道へ入る。

背の低い廃屋に飛び乗り、コンクリートの屋根の上で食事をする事にした。



「美味しいっ空も青いしいい気持ち〜……でもあっちの空暗いなぁ、また夕立でもくるのかな?」

そんな事を呟きながら、茉梨亜は空を見上げる。
果物一つを調度完食したところで、下から声が掛かった。


「茉梨亜ちゃん?」


「あっ秋吉サン」

下を見ると、廃屋の影から見知った男が茉梨亜を見上げていた。
「久しぶりですねっ」

秋吉はスラムで良くしてくれる細身の青年。目も細い。
よく市場で出会うので、世間話をする年上の友達みたいな人だ。

「ほんと久しぶりだな、今日は友達は?」

「え?」

茉梨亜は訝し気に秋吉を見た。

「友達って…どういう事ですか?」

「へ?何言ってんの、茉梨亜ちゃんいつもあの子らと居たじゃん…喧嘩でもしたの?」
秋吉の方が、茉梨亜の発言に驚いたようだった。

「あの子ら……?秋吉サン、あたし前にも知り合いのおじさんに言われたんですよ、友達は?って。あたしよくつるむ友達とかいないのになー」

「………」

茉梨亜は何も心辺りがなく、頭を捻る。
どうして自分が友達と居ることになっているのだろうか。

「茉梨亜ちゃん……君ほんとに茉梨亜ちゃん?」
秋吉は茉梨亜の顔を見上げながら見つめ、眉を潜めた。

「もっちろんですよー……あっまさかあたしのドッペルゲンガーが出歩いてるとか?!」
「えー茉梨亜ちゃんそれあんまシャレにならないよー」
茉梨亜の予想外に、秋吉は細い目で空笑いをしただけだった。