「ちょっと待ってよ…人見知りの僕達をこんな見知らぬ人達に任せる気?」

「どこが人見知りなんだ、特にオマエ、人喰ったタチのくせに」


……Bブロック診療所前。

拜早と咲眞をそこで下ろし、管原は助手座ったまま。
抜けられない用事があるらしく今からどこかへ行くらしい。

……あの屋敷を出発する時から運転席にはジャンパーを着た男が座っているが、おそらく研究所の人間だろう。


「その抜けられない用事ってなんだよ」

「デ・エ・トw」



「……あーなんかお腹空いたね」
「冷蔵庫漁れば何かあんだろ」
「あ、スルー?スルーかよ。まぁいいけど」


車からさっさと離れ診療所の扉を開ける少年二人。

その横、眼鏡の男が管原を覗き込む。

「後は俺達がやっておく」
「そーそ、管原はデェト、楽しんできて?」

もう一つの声はつい今ここで合流した白衣の男から。

「おぅ、処置は任せるけどな…」
管原は車の窓に肘を掛け、そんな白衣二人を見上げた。

「拜早の怪我の状態、あの二人には言うなよ」

既に少年達が入って行った診療所を見やる。

「大丈夫だよ……上手くやるさ。ねー勅使川原」
「俺がやるのか」
「だって突然現れた俺じゃ警戒するかもだからね、大怪我の処置」

もっともそうな事を言ってその男…塔藤はにこりと笑った。

「じゃ任せたわ…俺今日向こうで寝るから、何かあったら後ヨロシク〜」

「ハイハイ、頑張ってね〜」

お互い軽口を叩きつつ、車は発進される。


既に時刻は完全な夜。
車のエンジン音が消えると、診療所の周りは静かになった。


「……ごめん、管原」

もう見えない車へ呟いたそれは、他に無駄な音が無い為必然的に勅使川原の耳に入る。


「…謝るな、あいつは自分から行ったんだ……それに」

「ああ……けどね」

苦笑する。
管原は自分を立ててくれた。
それを呑んだ自分自身にも苦笑している。

「俺は駄目班長だなぁ」

「班員がしっかりしているから問題無い」

ぴしゃりと言われたその言葉が、塔藤は妙に可笑しかった。