―ユージェニクス―

「今のあたしじゃ、まだ帰れないから……でもちゃんと二人のところへ戻るつもりなのよ?」

「……ふぅん」

触れれば崩れそうな顔でそんな事言わないで欲しかった。
きっとこの短い間、茉梨亜は沢山の気持ちを飲み込んだのだろう。


「……ねぇ」

峯が呼んだ先は茉梨亜の横に付く捜査官。

「この子は捕まえなくていいわよ」

「!!」

驚いた茉梨亜に反して捜査官は冷淡に対応する。

「それはこちらで判断する事だ。君は黙っていなさい」

そんなきっぱり言われたものだから、峯もカチンと来たらしい。

「なっによそれ!アタシの言ってる事信用しないっての!?」
「こちらで事を調べると言っているんだ。何も問題なければすぐ自由になる」
「へぇ、ふん…どうだかね。面倒臭くなってここの女皆ソープ嬢扱いに逮捕するんじゃなぁい?」
「……なんだと?」

怖い。

取り巻く茉梨亜と高城は睨み合う彼らの様子に気が気じゃ無かった。

「…君、余計な口叩ける立場だと思ってるのか?」
「あーら当たってるのかしら?ヤダヤダだから外界って信用ならないのよ!…言われてムカついてんならきっちり調べる事ね。この子はただの被害者よ。ちゃんと保護してあげて」

「峯…?」

唖然とする。
峯が庇ってくれている。

「なっ何言ってるの峯、あたしは……!」

「そうでしょ茉梨亜。アンタは無理矢理連れて来られて逃げたくても逃げられない様強要された。事実よ」

はっきりと峯は茉梨亜を見据える。
その顔は厳しく、意思があった。


「……言いたい事は分かった。兎に角さっさと歩け、洗えば分かる事だ」
捜査官は変わらず冷たく一蹴する。
そんな様子に峯が呆れた顔をしていると

「俺も証言しようか?」


意外な声が背後から掛かった。

「…?」
見れば、そこには数人の警官に黒服、そしてダークスーツを纏った男が歩いて来る。


「あらぁ紀一……残念ね」
お互いに、と峯は笑う。
勿論小さな冗談だ。

「あぁ……おまえ達にも苦労掛けた」
「やっだ、キャラ違うわよそんな台詞!」

あからさまに変な顔をして、峯はテンションを上げてしまった自分に呻いた。
また気持ち悪いさが来たらしい。