―ユージェニクス―



黒川邸を出ると、外はもう夜闇が下りていた。

それを照らす様に巨大な白熱の非常灯がそこかしこに置かれ、警察が闊歩している。

そしてどこから入って来たのか護送用のトラックに、次々と黒い服の男達が詰め込まれている最中だった。


その騒ぎより外れた一角。
外れたと言っても警察が警護しているのだが…

そこに見た事のある二人組が座っていた。

「咲眞、あいつら……」

「うん、逮捕はされてないみたいだけど」

参考人扱いなのだろうか。
黒川の部屋で咲眞が助けた少年と少女の二人組は、警察に保護されていた。


更にその近く。
暗がりに紛れ一般人の姿…いや。

あの機材に目立たないワゴン車が停まっている所を見ると
「マスコミ、かな」
咲眞が呟く。

と……


「あ……」

明らかにそのマスコミ一味の中からこちらに向かって来る人影がいた。

長い癖のある髪にスカートの少女。


咲眞と拜早は思わず目を見開く。

「君は」
「美織、ちゃん?」

驚いた。

何故彼女がここに。
しかもマスコミの中から来たのか。


「ぶ、無事だったんですね!」

美織は拜早を見上げて、そしてきょろきょろと周りを見渡す。

「あの、あずさ、は……?」
出た問い掛けと共に、美織は拜早の隣に立つ咲眞に目を向けた。

「あなたは?」

「……いやぁ」

思わず咲眞は目線を外す。
面識もないこの自分の素顔で、美織やあずさの事を聞き出したり話し出すのもおかしいか……

「……あいつも無事だよ」
「!」

と、拜早が特に愛想もなく助け舟を出した。

「そ、そうですか!良かった……」

「……君、何でマスコミと居るんだ?」

そして不思議に思った事を問い掛ける。
それは隣の咲眞にも謎だった。
屋敷から逃げた際、マスコミに保護されたとでもいうのか。


「あ、……実は」

とつとつと、少し言いにくそうに美織は口を開いた。