―ユージェニクス―

「事情はどうあれ、彼らも参考人になります。後日話を伺いますよ」

「ああ、それでいい」

管原は素直に日堀の言い分を飲み込んだ。

「……それから、貴方達が何を此処から持ち出したか、それも口を割って貰いますから」

その言葉に研究員二人は反応する。

「あら、なんで俺らが何か持ち出したなんて決め付けるんだよ」
「……監視を侮って貰っては困ります。黒川大介の部屋から……」

日堀の口を止めたのは前に立ち塞がった勅使川原。
それを日堀は目を細めて見やった。
「…なんですか?」

「確かに俺達は黒川の部屋から回収した物がある。だがまだ部屋に残りがあるぞ」

「!」

「気になるんなら押収して調べてみる事だな……もっとも」
勅使川原はほんの微かに口角を引いて。

「調べるには“研究所”に頼るしかないだろうが。そういう代物だ、あれは」

そして管原達にここを去ろうと促す。

日堀は眉間を寄せて思案し、拜早と咲眞にしてみれば何の話か全く検討もつかなかった。












「……で?なんで管原さんが居るの?ほんとびっくりしたんだけど」

咲眞にジト目で見上げられるが、管原は調子のいい顔をして目を合わせない。

「いや〜、かわいいおまえ達が心配になってついつい!」
「嘘つけ」

嘘じゃないさ!と管原は拜早に講義する。

……確かに嘘ではない。心配だったのは本当だ。
ちょっと黒川邸に乗り込んでくるから研究所の住所貸して、などと言われた時は一体何する気かと焦った。


……しかし今こうやって正気のまま二人揃って横に居るのなら、一安心と言ったところ……

「…ん?二人?」

一階廊下、もうすぐ屋敷の玄関ホールという所で管原は足を止める。

「ちょっちょっとおまえら」

「?」
「何」

「ま、茉梨亜はどうしたんだよ」


そうだ。

こいつらの目的は茉梨亜の救出だったはずで、それが、今もまだ二人で……


「駄目、だったのか?」

管原はなんと言ったらいいか分からず遠慮がちに言うと。

「駄目だったって言うか…」

「置いてきた」

咲眞が遠慮なく突っ跳ねた単語を言い切った。