おっと忘れてたみたいなノリで拜早は自分の両足を見下ろす。

……撃たれた足は真っ赤だった。

「うーわ」

逆に二人して青ざめる。

「何これ……拜早生きてる?」
「生きてるっつーの!」
「ぅわぁ、血はもう止まってるみたいだけど、これバリバリに固まってるよー」

しゃがみ込んで咲眞は拜早の赤足を突ついてみる。
それを拜早は痛がりもしなかった。

「何も感じねぇ……完全に麻痺したかな」
「にしちゃあよく歩けてるよね」
「や、歩きにくい感じはする」
「早急な手当てが必要ですね」
「うん、神経やられてるかも……って、え?」

会話に違和感を覚える。

と同時に二人は身を翻し対象人物に身構えた。
突然現れた人影。


「な、誰、だ……?」

思わず疑問符を漏らす。

てっきり黒服の残党かと思ったが、しかし彼らが先程の台詞を吐くとも思えない。
案の定黒川邸内に居るべきではない人物が立っていた。

「普通に見てもその足は尋常ではありませんよ」

グレーのスーツに銀縁眼鏡。

日堀……


「警、察……かな?」

しかし二人は彼を知るよしもない。


「ふむ、彼らはそうですが私は違います」

言って、日堀は周囲に現れた捜査官達に目配せする。
二階へと進行して来た警官達は次々と廊下を立ち回り、並んだ部屋の扉を開放していた。


「? じゃあ誰だなんだ」

「君達はニュースを見ないのですか…まぁそうでしょうね。言うなれば私は瑣末な閣僚の一人ですよ」


「閣僚…?」

「えっ政府!?」

流石に咲眞が目を見開く。

何故警察に混じって政府の人間が居るのか。

「それにしても最近の若い子は金髪に白髪ですか…私には理解出来ませんよまったく」

いや、黒川邸に外界の警察が乗り込んだ時点で何かスラムとの拮抗が崩れたのだ。
それは二人も瞬間理解している。

だがそれでも事態が把握しきれない。

「さて」

代わりに日堀が目を細めた。

「君の足は問題だが、その前に訊かせて貰いたい」

拜早と咲眞の疑問を余所に、彼はただ一点の目的を遂行するのみとして問い掛けた。

「貴方達は此処の関係者ですか?」